高校時代に合気道を始めた僕は大学進学後合気道部に入部するも、たった2週間で退部し空手に転向した旨をこの記事で述べた。
少し前まで思い出したくもなかったが最近ようやく笑い話にできなくもない具合に記憶が薄らいできたので、僕が速攻で辞めた合気道部がどんな感じだったか書いておこう。
僕はおそらく、こういう「典型的な体育会系」のにおいを嗅いだ学生としては最後の世代に当たるはずだ(まだあるのか?)。
ある意味貴重な体験の連続だったので、これ以上記憶が薄れる前に記録しておく。
ブラック企業さながらの文化
当時ブラック企業という言葉はまだ聞かなかったが、その合気道部は今でいうブラック企業に似た性質を有していた。
先輩に呼び出されればいつでも馳せ参じて朝も夜も土日も関係なく雑用をこなし、稽古には先輩より先にこなければならず、稽古が終わっても先輩より先に帰ってはならない。
お昼休みも部室に出向いて雑用をこなすので、ゆっくり昼飯を食う時間もない。
もちろんこれらの労働に対価なんて存在しない。むしろ部費は毎月しっかり徴収される。2,000円ぐらいだったと思うが、学生にとっては貴重な小遣いである。
つまりタダ働きどころか、金を払って先輩のために労働をするのが当たり前の文化だった。
とはいえ……これらはよくある基本的なブラック要素なので、もうちょっと面白い(?)ことも書いておこう。
校舎の屋上で個人情報を叫ぶ
まず意味が分からなかったのがコレ。大学の校舎の屋上から地上に向かって大声で名乗りを上げる謎の行事(?)である。それもほぼ毎日。
夕方5時くらいに先輩に連れられて屋上に行き、地上を歩く他の学生に向かって「失礼します!自分は体育会合気道部所属、〇〇大学□□キャンパス△△学部××学科1年すずもとです!出身は〜」といった具合に大声で自己紹介をするのだ。
地上に聞こえるよう叫ぶので嘲笑の的になるだけでなく個人情報もダダ漏れである。
LINEグループ内の厳格なルール
当時すでにLINEが存在しており、部内の情報共有はグループLINEで行われていたのだが、その中の文面にも厳格なルールが存在した。
どんなルールかというと「先輩に失礼のないフォーマット」が定められていた。部内では3年生が貴族、4年生は神だったので、テキストのやり取りにおいても彼らに失礼があってはならない。
詳細は忘れたので端折るが「お疲れ様です。失礼いたします。すずもとです。」から始まり「以上です。失礼いたします。」で終わるような感じ。
むろんフォーマットをきちんと運用できていなかったり、敬語がまともに使えていなかったりすると教育的指導が行われる。
稽古が始まる4時間前から掃除
基本的に先輩の指導のもとで稽古をするが、外部の指導員を招いて稽古する日もある。
で、その日の準備やら何やらがもう半端じゃない。
まず、1〜2年生(下っ端)は稽古開始時刻の4時間ぐらい前に集合し、指導員の控室を何時間もかけて綺麗にする。家具とかも移動して模様替えもする。
で、稽古が終わったらまた何時間もかけて原状復帰するから夜遅くまで時間を取られる。
稽古をしている時間より掃除や模様替えをしている時間の方が圧倒的に長い。
もはや合気道の稽古をしているのか掃除をしているのか分からない。
ぶっちゃけ現代は数千円の月謝を払えば武道の指導を受けることができる。わざわざ内弟子のように雑務をこなし、大先生、大先生とヘコヘコする必要もないのに、なぜこんなことをしているのか意味不明だった。
ちなみにお茶を出すなどの給仕もやった。もちろんこれらの作業はすべて無給。というか部費を払っているのだから金を払って労働し(以下略)。
なぜか学ランを着てお見送り
その指導員が帰る際お見送りをするのだが、その際なぜか学ランを着用する。
更衣室に学ランが用意されていて、わざわざそれに着替えて武道場の玄関に整列するのだ。マジで意味不明。
辞めたいといっても辞められなかった
こんな文化に嫌気がさした僕は、部活を辞めて大学外で道場を探して稽古しようと思った。
しかし以前の記事でも書いた通り辞めたいといっても辞めさせてもらえず、退部届をその場で突っ返されたので、大学の事務員にかけあって登録を抹消してもらった。
その後「きたねーぞ!」みたいなLINEが届いたが黙殺。
こんな辞め方をしたもんだから、大学内で先輩に出くわしたらヤベェということで、先輩より強くなるべく空手を始めた。
その後先輩とは何度か出くわしたが、なんとかセーフだったw
武道を始めるなら部活じゃなくても良い
現代はいたるところに武道・格闘技の教室があって、金さえ払えば指導を受けられる時代だ。
もし今大学生の方がこの記事を読んでいて、何か格技をはじめようと思っているのなら、べつに部活に拘る必要はないと思う。一度しかない大学生活、武道以外にもやりたいことは沢山あるだろうに、先輩の面倒を見るために多くの時間を割く必要があるとは思えない。
僕ももう1回大学生に戻りたいなぁ。